法律マメ知識

交通事故シリーズ 好意同乗中の事故(第1回)―原則は減額しない

弁護士 中野 直樹

 好意同乗とは、聞き慣れない言葉ですが、親族や知人間で、無償で、車に乗せてもらうことを言います。子どものスポーツクラブで保護者が車を出し合って試合会場まで運ぶこともその1つです。世間ではよくあることです。

 この好意同乗中に、不幸にも運転者が事故を起こし、同乗者が怪我をしたり、場合によっては命を落としてしまった場合に、運転者や車の保有者に対する損害賠償請求が通常どおり認められるのかどうか、という論点があります。

 この場合、減額をしないのが原則です。たとえば、高校生の被害者が同級生とゲームなどで徹夜をした後、同級生運転のバイクに同乗中、一方通行道路を逆行して自動車と衝突して死亡したケースで、大阪地裁判決は、徹夜の事実が直ちに事故発生の危険が極めて高いような客観的事情にあるとはいえないとして、損害賠償請求の減額を否定しました。運転者の運転に道路交通法違反があったというだけで、単に同乗をしていただけで被害を受けた者には、非難をすべき事情がないとの考えによるものです。

2019/01/17
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