交通事故シリーズ 他人が起こした交通事故の責任(第6回)―自動車泥棒されたときの事故
弁護士 中野 直樹
エンジンキーをつけたまま自動車を駐車していたときに、この車を盗まれてしまい、しかも犯人が運転し始めて間もなく人身事故を起こしてしまった場合に、持主に法的な責任があるか、という問題が生じます。
盗まれた場所が自宅や事務所の敷地内であるとか、第三者の自由な出入りを禁止する構造・管理状況の駐車場であるときには、エンジンキーをつけてあったとしても所有者の責任はありません。誰でも自由に出入りできてしまう青空駐車場(月極)の場合は結論が分かれるかもしれません。
これに対し、公道上やスーパーの駐車場などに停めて場合は、鍵もかけず、エンジンキーをつけたままにしていたことが、泥棒運転を誘発したという点を重視されて、所有者の責任があるとした裁判例があります。この場合でも、盗まれたことに気づいて直ちに警察に被害届を出して窃盗の捜査が始まった後数日後に、泥棒が事故を起こしたというケースでは、所有者の責任が免れる可能性があります。
いずれにしても車から離れるときには、わずかの時間でもエンジンキーを抜き、施錠をすることを心がけましょう。
2018/03/15