相続アラカルト3(第1回)
弁護士 山下 正祐
老後の法律問題を考える №1
今年(平成27年)1月1日から相続税の改正があり、世間では相続税対策をどうするかという問題が取りざたされています。
相続税は、相続財産(遺産)全体にかかるもので、相続財産を減らさない限り、原則として相続税は低くはなりません(実は、相続人の数を増やせば相続税は低くなるのですが、相続人の数を増やすことは、そう思うようにはできません)。そのため、生前に子どもや孫に財産を前渡しする方法(生前贈与)が考えられ、政府もこれを後押しするような税制の変更がなされているのです。
しかし、生前に財産の贈与などをしてしまうと、自分の老後の資金を減らすことにもなります。老後の資金の心配がない人、財産が十分余っている人は、生前贈与などで節税をする意味もありますが、多くの人にとっては、むしろ自分の老後の生活設計のほうが大切な問題なのではないでしょうか。
高齢化社会になって、90歳100歳まで生きる人が珍しくなくなってくると、その間の生活の保障を考えることが不可欠になってきます。年金は十分にもらえるのか、病気になったときにかかる費用は大丈夫だろうかなどなど、不安要素、不確定要素が山積しています。
また、年老いていくにしたがい認知能力が低下していくこともあり、自分の財産の管理についての心配も出てきます。
是非、一度、自分の将来の生活設計をしてみてはどうでしょうか。
その中で、自分が死んだあとの自分の財産(遺産)を誰に引き継いでもらうか、自分の認知能力が衰えた場合、自分の財産管理を誰に任せるか、考えてみることも大切なことです。
以上に挙げたような、相続税の問題、遺言の問題、成年後見の問題などについて、これから数回にわたり、少し考えてみたいと思います。どうぞお付き合いください。
2015/07/21