法律マメ知識

私の相続事件簿第2弾(全10回) 第8回 相続人がいない

弁護士 中野 直樹

「相続人がいない」とは

 相続人がいないという場合の意味には、2つのケースが考えられます。

 1つは、法定相続人が音信不通であるばかりかどこにいるのか不明な場合です。住民票をたどって所在をつかめる場合もありますが、いわゆる住居不定で調査不能なときもあります。このような場合に遺産分割協議をするためには、所在不明者の代わりに、家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任を申立てます。このときにできれば、親族の中から、管理人を引き受けていただける方を候補者として用意しておくとよいでしょう。

 もう1つは、戸籍上法定相続人が不存在の場合です。

「相続人不存在」とは

 民法は、法定相続人について順位をつけて、高い順に、配偶者、子(養子含む)・孫・ひ孫、両親、兄弟姉妹・兄弟姉妹の子と定めています。少子高齢化の現代社会では、一人っ子、結婚しない方、結婚しても子がいない方などが多くなっています。この場合親が先に亡くなっていると、法定相続人が存在しないケースが出てきます。

「相続財産法人」と「相続財産管理人」

 ある方が法定相続人なしで亡くなったとき、その方に不動産や預貯金など相当な遺産が残っていた場合には、法律は、その遺産は当然に「相続財産法人」となるとしています。

 相続財産法人は誰かが整理・換金をしなければなりません。この役割を担うのが「相続財産管理人」です。

 この相続財産管理人は、家庭裁判所が選任しますが、申立が必要です。申立をできる者は、法定相続人ではないが、被相続人と遠戚関係にあるとか、被相続人と深い親交があったとか、被相続人に債権を有しているとかの利害関係人です。この利害関係人もいない場合には、公益代表者としての検察官が申立を行います。

 相続財産管理人には、弁護士や司法書士など専門的資格を持つ者が選任されることがほとんどです。

遺産はどこへ

 相続財産管理人は、法律が定めたいくつかの手続きをとり、相続人の不存在を公的に確定させます。合わせて相続財産の確定と処分による換金をします。

 この遺産はどこにいくのでしょうか。

 まず、被相続人に対し債権を有していた者に弁済されます。

 次に、特別縁故者からの請求に対し分与されることがあります。特別縁故者については次回に登場させます。

 最終的に残った相続財産は、「国庫に帰属」します。国の物となると言われていることはこのことを指します。

2015/01/09
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