私の相続事件簿(全10回) 第9回 遺産の範囲―ゴルフ会員権
社員権
亡くなられた方が、株式やゴルフ会員権などを遺していた場合に、その相続がどのようになるのか、手続きがどのようになるのかについて、私たちも勉強をしたり、経験をしてみないとわからないことがけっこうあります。
これらは社員が団体に対して有する法律上の地位である社員権と言われています。
株式の相続
株式が相続の対象となることは争いがありません。相続人が複数いるときには、預貯金のように法定相続分で当然分割されるのか。これについての裁判例は、当然分割とならず、共同相続人間の準共有となるとしています。「準共有」とは聞き慣れない言葉ですが、数人で所有権以外の財産の持分を有することを言います。
普段、株式は証券会社に預けてあります。共同相続人は、共同で、証券会社の指定する相続手続きに従った書類作成をして提出する必要があります。この際一旦相続人の特定口座の開設をしなければならないことが特徴です。
ゴルフ会員権
ゴルフ会員権には、預託金会員制、社団法人制、株主会員制の3つの形態があります。わが国では大半が預託金会員制クラブです。
預託金会員制ゴルフ会員権は、ゴルフ場の優先が利用できるクラブ会員となる資格の面と、預託金返還請求権や会費納入義務が生じるという面があります。このうち預託金返還請求権や会費納入義務は相続の対象となります。株主会員制ゴルフ会員権の場合には株主たる地位も相続されます。
ゴルフ場でプレーする権利は
いずれの形態の場合でも、ゴルフ場の優先が利用できるクラブ会員としての資格については、相続の対象とならないと解されています。これは会員相互の人的信頼を基礎とするからです。
実際には、ゴルフクラブの定款に、会員権の承継に関する定めがなされており、これに従って入会をしたいと考えている相続人が入会の承認を求めることになります。
お金に換えるにはどうする?
入会しなかったり、承認を得られないときには、会員権を第三者に売却することになります。このときには、定款にしたがって承認を得る必要があります。相続人が複数いるときには、遺産分割協議書で相続人を確定させ、その相続人の名で手続きをとります。仮に、会費の未納がたまっているときには、まずこの未納分を全額支払ってからでないと手続きがとれません。