お金の貸し借りをめぐるトラブル(全2回) 第1回
友人知人からお金を貸してと言われたら
友人知人からお金を貸してと言われたときに、何とか助けてあげたいと思うのが人情です。しかし、そういう頼みごとをしてくる相手の経済状態は相当深刻だと考えた方がよいと思います。借りたお金は返すというのが原則ですが、最悪の場合、返してもらえないこともあると考えてください。ですから、自分の生活にどうしても必要なお金は絶対に貸してはいけません。冷たいと思われようともはっきりと断ってください。友人・知人を助けたいと思うのであれば、お金を貸すのではなく、なぜお金が必要なのか事情をよく聞きます。生活困窮の場合には生活保護を受けるようすすめ、多額の借金を返しきれない場合には弁護士に相談するようすすめてください。生活が困窮したり借金取りに追い回されたりすると平常心を失い、その場を逃れたいという思いで借金を申し入れることがありますが、これに応じてお金を貸しても何の解決にもなりません。多少経済的な余裕があるので貸してもよいという方は、返してもらえないこともあるということを覚悟してください。お金を貸す場合には、必ず借用証を書いてもらいましょう。
確実に返してもらえる手段はあるか
借用証の内容としては、貸し借りの当事者の名前、貸金(借金)の金額、お金を貸した日付、返済期限、返済方法、利息の有無等を必ず書きます。たとえば、「借用証、○○様(お金を貸した人の名前)、金○○円也、返済期限○年○月○日、又は、○年○月から毎月○日かぎり金○○円ずつ○回払いで返済します、○年○月○日、住所○○、氏名○○(お金を借りた人の名前)」と書いてもらいます。借用証を書いてもらったのに約束の期限にお金を返してもらえない場合には、民事裁判を提訴して判決をもらい、判決で財産に強制執行をかけて回収することになります。もっとも、借用証を作成する際に、公証役場に行って公正証書を作成すると、民事裁判で判決をもらわなくても公正証書だけで強制執行することができます。ただし、公正証書をつくっておけば確実に返してもらえるかと言えば、そうとも言えません。お金を貸した相手に財産があれば強制執行をすることができますが、財産がなければ強制執行のしようがありません。強制執行の対象となる財産とは、銀行預金、給料債権、不動産等々です。お金を貸すときには、相手の財産状態をよく知っておく必要があります。
多重債務とは?
多重債務とは、多額の借金があって返しきれない状態になっていることをいいます。このような場合、法的な解決手段としては、任意整理、民事再生、破産などの方法があります。収入から必要不可欠な生活費を差し引いて、いくら返せるかによって、どの方法をとるかを決めます。長期分割払いにすれば借金全額を返せるという場合には弁護士が返済計画をたてて返済します。これを任意整理と言います。借金全額を返せないが借金額の5分の1以上の金額を3年間で返せるという場合には民事再生の申立を裁判所にします。この場合は、借金が大幅に減額されます。収入からみて借金をとても返せそうもないという場合には破産申立を裁判所にします。この場合、裁判所が免責許可決定をくだすと法律上の債務は消滅します。公正証書でも判決でも、債務は消滅します。お金を貸すときには返してもらえないことがあると述べましたが、法律的にはこのようなことです。お金は貸さない、保証人にならないというのが鉄則です。