所員雑感

所員雑感 Vol.41 たった一人のあなたのために!

弁護士 小峰 将太郎

 なんだかどこかで聞いたようなタイトルですね。我々弁護士としては、こういった雑感を書くとき、タイトルや内容について著作権の問題で何か言われないか冷や冷やしながら書いています。(笑)まあ、これくらいはありふれた言葉なので大丈夫だと信じています。

 さて、前置きはこれくらいにして、今回は私が弁護士になってから、弁護士とは無関係の職業の友人から聞かれることについて書いていきたいと思います。

 まず、一番多い質問ですが、「弁護士って儲かるの?」という質問です。下世話な話ですし、回答に困る質問でもあります。正直な話、働いている地域や取り扱い分野、仕事量など、各弁護士によって様々ですし、収入も弁護士によって様々です。私がどうかというと…、ご想像にお任せします。(笑)

 次に、「裁判で『異議あり!』って言ったことある?」という質問が多いです。この質問をされるとみんな弁護士のイメージはテレビドラマや映画、テレビゲームのイメージが強いのだなぁと実感します。裁判の尋問という手続(事件の当事者や関係者に対して法廷において口頭で質問するものです)では、確かに相手方の弁護士や検事が言った質問に対して異議をだすことがあります。もっとも、異議を出すときというのは、あまり聞かれたくない質問をされたときだったりするので、あまり乱発すると、かえって裁判官の印象を悪くしてしまうこともあります。ですので、弁護士としては、異議を出すかは慎重になります。また、異議を出すときもあまり大げさにやると裁判官の心証も悪くするかもしれませんので、身を乗り出したり、某テレビゲームのように相手を指さしたりはしません。ちなみに私は民事刑事合わせて10回くらいは尋問の機会がありましたが、異議をだしたのは1度だけです。

 最後に、意外と多いのが、「弁護士って一度にどれくらいの数の事件を抱えているの?」という質問です。この質問をしてくるのは、弁護士の仕事を少し知っている大学の法学部の学生や法科大学院の学生が多いです。テレビドラマや映画などだと、1件の事件にスポットが当てられ、その事件について現場検証をしたり、関係者の故郷にいって、事情聴取などをしたりしています。ある程度弁護士について知っていると、弁護士が民事事件や家事事件、刑事事件、行政事件をこなしているということを知っているので、こんな風にずっと同じ事件に時間をかけられるのだろうか?という疑問が生じるのだと思います。質問に対して結論から答えると、弁護士が一度に持っている事件の数は弁護士によって異なります。しかし、少ない人でも30件くらい、多い人だと、100件近くの事件を処理しているというのが弁護士の現実です。私も今40件ほどの事件を抱えています。これらは、急がなくてはならないもの、ある程度時間をかけて行うもの、刑事に関するもの、民事に関するもの、など様々です。こういう回答をしたときに、質問した方から、「じゃあテレビドラマみたいにあんなに1つの事件について一生懸命時間をかけてやらないんだね」という返答をもらったことがあります。これについて私は、そんなことはない、という風に答えました。というのも、確かにテレビドラマにあるように一週間ずっと外にでて、関係者の故郷に事情聴取に行ったり、行った先で知り合ったおじさんと仲良くなったりはしませんが(笑)、それでも、弁護士はそれぞれ依頼者のために夜遅くまで、警察署で被疑者と相談をしたり、寝る間を惜しんで書面を書いたり、一生懸命力を尽くしています。40人や50人いる依頼者の方に対して、40分の1や50分の1の力で取り組むのではなく、いつでも、目の前にいる、たった一人の依頼者のために、力を尽くしているのです。

2017/07/07
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