所員雑感 Vol.31 娘と一緒にスペインの旅 第6話(コルドバ編)
ローマ橋・イスラム・ゴチックの共存
旅の6日目はセビーリャからバスで、グアダルキビル川の上流のコルドバに移動した。紀元前ローマ帝国の版図となり、8世紀からイスラム王朝の首都となった。16のアーチで支えられているローマ橋を渡って、メスキータに入った。メスキータはイスラム教の寺院を指すが、13世紀にキリスト教が支配をしてから、その内部が大聖堂に造り替えられたものである。
イスラム建築は目線の位置に窓を設けて光を取り入れるが、キリスト教は天から光をとるために天井板を剥がしたという。大理石で造られた中央祭壇、パイプオルガン、材木に彫刻がほどこされた聖歌隊席等は権力の力を感じさせる、見事なものであったが、それでも赤茶と白の馬蹄型のアーチのイスラム建築の美しさが目に残った。
オレンジ・花の小径・豚
イスラム勢力はアフリカからオレンジをイベリア半島に持ち込んだ。街路樹には椰子とともにオレンジが使われている。強烈な太陽光とオレンジの木が織りなす光と影のコントラストが目を楽しませるだけでなく、日陰効果も抜群であった。
迷路のような小路が入り組む旧ユダヤ人街を案内された。白い家の壁は赤い花の植木鉢で飾られ、狭い路地に様々な品を扱う店が商品を入口に吊して客を引いていた。現在、ユダヤ教徒は4~5家族程度だとの説明であった。小径からメスキータの塔が見える写真スポットで、通行人の頭を避けながら、うまくシャッターを切ることができた。鮮やかな彩りの皿にとても気が引かれたが、娘から重さと割れの心配を注意され、買わなかった。今写真で見返すと、お土産対象から外したことがとても後悔されるのである。
店内に千年の歴史をもつという井戸を見物した後、遅い昼食となった。郷土料理と言われる牡牛のテールの煮込みとハムとビールを味わっていると、ギター流しの男性が座を盛り上げてくれた。
高速鉄道(AVE)
14時29分発のマドリッド往きの列車に乗った。1992年のセビーリャ万国博覧会に合わせてマドリッドとセビーリャを結んで開通した。時速300キロだそうだ。この新幹線がマドリッドとバルセロナを結んだのは2008年頃まで遅れた。ここには、深くて広い谷間があるからだ。谷間といっても山河ではない。バルセロナ側が拒絶してきたからだそうだ。これには深い背景がある。2015年9月、バルセロナを州都とするカタルーニャ州議会選挙で、独立派が過半数を占めた。カタラン語という独自の言語と文化をもつこの地域は古くから独立の機運が強い。同じ北部に位置するバスク地方とともにスペイン中央政府のみならず、EUにとっても、統一・統合を揺るがしかねない存在となっている。