所員雑感 Vol.27 娘と一緒にスペインの旅 第2話(古城そして白い村編)
古城の宴
バルセロナから郊外のカリドナの丘にあるパラドール(古城)に向かった。スペインでは古城の維持費を捻出するためにホテルに改築し開放しており、私たちが泊まったパラドールは9世紀の城塞を利用した建物だとの説明だった。
いにしえの気分にひたれる晩餐の間で、カタルーニャ料理を食べながら自己紹介をしあった。古城コースを知ったH弁護士が持参してきた尺八を取り出して、荒城の月を演奏した。石造りの間に渋味のある音色が響き渡り、ワインに酔った心に染みいった。そのうちに、朗々と歌い出す方も出てきて、にぎやかな交流となった。
朝焼けの古城散策
バルセロナに着いたときにサマータイムに切り替わり、1時間時計の針を進ませた。午前7時頃はまだ夜明け前である。外に出ると、眼下の岩塩鉱山に隣接する町の灯りが夜景となっている。古城の周囲をまわるうちに、東の空に現れたうす桃色の雲が次第にあかね色に染まり始め、万物が色を取り戻した。さすが城は360度の展望が得られるポイントに造られている。はるか遠くにフランスからナポレオンが越えてきた国境の3千メートル級の残雪をかぶったピレーネ山脈が望めた。
美味しいパンと生ハム、果物の朝食を済ませて、バスでバルセロナ空港に向かった。途中、モンセラの山塊を車窓から眺めた。平地ににょっきりと立ち上がる奇岩群で、鋸状の稜線の最高峰は1241メートルだそうだ。11世紀に中腹に修道院が造られ、キリスト教の聖地となっている。偉大な自然の力と神が融合している、わが国の山岳信仰に通ずるものだ。この自然の造形は、昨日みてきたガウディの作品に投影されているとのことである。
太陽の海岸とピカソの生家
飛行機で地中海沿いに南下し、マラガに降りた。バルセロナからの地中海沿岸は、黄金海岸、オレンジの花の海岸、白い海岸、太陽の海岸、光の海岸という鮮やかで、ときめくような名前の自然の砂浜が延々と続き、世界的なリゾート地となっているそうだ。
マラガでパエリアの昼食を取った後、ピカソの生家博物館・美術館を見学した。抽象芸術は解釈しようとするな、ありのままに感じろと言われるがどうであったか。本来学芸員資格がないと作品案内ができない。時間の関係で、現地日本人ツアーガイドが館内で私たちに簡単に説明する形で済ませようとするのだが、配置されている学芸員スタッフがやってきて作品に対する解釈を加えることはできないとガイドに執拗に注意をしている。互いのプロ魂が激突して火花を散らすシーンであった。
白い村ミハスへ
真っ青な空、紺碧の海を背景に、真っ白な壁の建物が斜面の小さい小道沿いに建ち並ぶミハス。白い村と呼ばれるアンダルシア地方特有の美しい風景である。黒いマリア像の納められた小さな教会に礼拝した後、白い壁と統一された色彩の鉢に植栽された赤い花に彩られた小道を散策した。不動産屋の売り物件広告を眺めるとプール付きで30万~70万ユーロの価格が付いていた。ホテルに戻り、地中海の遙か先にアフリカ大陸が望めるテラスで生ビールの夕暮れを楽しんだ。