所員雑感

所員雑感 Vol.25 小説ならではの表現

弁護士 德田 晃一郎

本を読む

 何でもアナログからデジタルへの移行が進んでいる時代ですが、弁護士の世界は今でもけっこうアナログです。仕事上の色々な連絡には今でもFAXが欠かせません。そういうアナログな業界だから、というわけでもないとは思いますが、弁護士ってけっこう本を読む人が多いです。新しい法律や最新判例の勉強をしたり、新書を読んだり。それで、私も通勤電車ではだいたい本を読んでいるわけですが、残念ながらそういった真面目な本はほとんど読みません。不真面目な本、というとまた意味がおかしくなりますが、要は小説を読むわけです。ほとんどは日本の現代小説。

 毎年5月頃に発表される「本屋大賞」という文学賞があります。書店員さんが選考するのが特徴の文学賞なのですが、そのランキング上位の作品を手当たり次第に読むようにしています。そのようにすることで、自分では選ばないであろう良い小説に巡り合うことも少なくないです。

書店員に人気の作家

 その「本屋大賞」で、書店員に圧倒的に支持されている伊坂幸太郎という作家がいます。これまでトップテンランキングに入った計122冊中なんと10冊が伊坂幸太郎作品!2番目に多くランクインさせた作家は4作品ですから、いかに圧倒的な支持かがわかります。

 2008年には、「ゴールデンスランバー」で見事本屋大賞1位を獲得しました。この作品は、堺雅人主演で映画化もされています。

小説ならではの表現

 しかし、私が今回勧めたい小説は、「ゴールデンスランバー」ではなく、「バイバイ、ブラックバード」という作品です。名作が多数ある伊坂作品の中では、代表作といえる作品ではないと思います(失礼!)。簡単にあらすじを書くと、五股をかけている主人公が、2週間後とある場所に強制連行されるまでの間にその5人の女性に別れを告げるというものです。

 代表作ではないこの作品をなぜ推すのか?それは、私がこれまで読んだ小説の中で、最も切れ味のいい終わり方をする小説であり、かつそれが文字だけで構成される「小説」ならではの切れ味だからです。ここで終わり方を紹介するような野暮なことはしません。最後の一文の後に、書かれていないドラマが加速していくあの感じ、ぜひ読んでもらいたいと思います。

 弁護士も、ほかの職業では代替できない弁護士ならではの仕事をしっかりとするよう心がけたいものです。と、切れ味の悪い終わり方で締めます。

2015/06/02
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