所員雑感

所員雑感 Vol.17 ささやかな光

弁護士 德田 晃一郎

 20歳まで、沖縄と鹿児島に住んでいました。どちらも自然にあふれた場所です。大学入学を機に上京したことで、日々の行動範囲で自然を感じる機会はぐっと減ってしまいました。今でも夏に沖縄に帰省すると、空の青、海の青、うるさいセミの声に、実家に戻ってきたなぁと感じます。そういうわけで、やはり自然に触れるとホッとするわけです。去年とある機会に東京タワーに上って夜景を見たのですが(スカイツリーは高すぎて怖くて上れない…)、その建物の密集具合に圧倒されました。そして、街の明るいこと。華やかな光。

 さてさて、前置きが長くなりましたが、もう少しだけ前置きを。僕の働く事務所はJR相模原駅前にありますが、相模原市内での普段の行動範囲は、相模原駅周辺、相模原の裁判所や市役所周辺、たまに相模大野駅周辺と、ごくごく一部です。

 そしてここからがようやく本題、昨年7月初めの出来事です。日々の仕事に追われ、海に行ったり、花火を見たりといった夏らしい予定は0。すると、事務所の先輩弁護士が「蛍を見に行かないか。」と誘ってくれたのです。しかもなんと相模原市内で見られる場所があるとのこと。図々しく妻も一緒に、二つ返事で連れて行ってもらうことに。蛍を最後に見たのはいつだっけ?小学生の頃、夜家にいる時に父親が急に「電気を消せ!」と言ったので電気を消すと、どこからか蛍が一匹迷い込んできていたのが蛍を見た最後の記憶です。なんと20年以上も前の話。

 当日。事務所前で待ち合わせて、車に乗せてもらい約1時間のドライブで、とある宿に着きました。その宿の庭で蛍が見られるらしいのです。着いた頃にはまだ明るかったのでまずは宿で食事となり、地元で取れた山菜や魚に舌鼓み。運転するので飲めない先輩弁護士に恩を仇で返すがごとく、僕と妻はビールもいただきました。そのうちに日が暮れてきてそろそろということで、懐中電灯を持って外へ。鑑賞スポットに向かいます。着いて懐中電灯を消すと辺りは本当に真っ暗。少しすると、ほのかに何か光った気が。近づくと一匹の蛍がいました。そして気付けば辺りには何十もの光がありました。こんなにたくさんの蛍を見たのはもちろん生まれて初めてです。しばらく飽かずにみんなで眺めていました。後で宿の方に聞くと、この日は風があったので蛍が少なかったとのことですが、それでも十分にいっぱいいました。青いような、緑色のような、一瞬でも目を離すとなくなってしまいそうなささやかな光。しかし、ずっと心に残るような温かい光。

 相模原には豊かな自然が多くあります。住んでいる人からすれば言うまでもないことだと思いますが、毎日仕事ばかりだと意外にそういう観点を持てないものです。でも、せっかく毎日来る場所なのですから、仕事をするだけじゃもったいない。蛍は今年もまた見に行きたいですし、湖や森なども行ってみたい。相模原の素敵なスポットに、これから少しずつ足をのばしていきたいと思っています。

2014/05/12
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