S建設の貧困ビジネスによる生活保護利用者への金銭管理は不法行為
弁護士 志田 なや子
S建設社長はホームレスの方に「保証人がいなくてもアパートを借りられる、生活保護を受けられる」旨のビラをまいて、S建設所有のアパートを貸し、市役所に同行して生活保護を受給させ、アパートの賃貸者契約とともに金銭管理契約をむすばせた。社長は、金銭管理契約により生活保護費が入金される口座の預金通帳・印鑑を管理し、その生活保護利用者には1週間に5000円を渡すのみで、それ以外の金額は修繕積立金や保証料等の名目をつけてS建設のものにした。搾取された7名は、2016年にS建設と社長に対して損害賠償請求の民事裁判を起こした。横浜地方裁判所は、2020年に「被告らが、生活保護受給者である原告らに本件各建物を賃貸した上で本件各金銭仮契約を締結し、生活扶助の金額を管理し、原告らには上記金額しか渡さず、残金を修繕積立金等の名目で取得したことは、生活に困窮する者に対し必要な保護を行って最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長することを目的とする生活保護法の趣旨に反し、原告らが健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を侵害したものとして不法行為を構成し、被告らは原告らに生じた損害につき共同不法行為責任を負う」と損害賠償を命じる判決を出した。S建設らは控訴したが2012年6月、東京高等裁判所はS建設らの訴えを退けている。担当は当事務所の志田、德田である。
2021/11/15