事例紹介

貧困に起因する犯罪と刑事弁護

弁護士 半田 虎生

 いわゆるネカフェ難民で、インターネットカフェでの生活費を捻出するために、万引きした商品を転売していたAさん。

 Aさんにそのような選択をさせた一因は社会にもありませんか。住む場所のない人にとって仕事を見つけることは簡単なことではありません。生活保護も申請すれば受給できるものではなく、行政は「まずは相談」などといって様々な理由で申請をあきらめさせるのが現実です。そして、近年「排除アート」という形で、横になることのできるベンチ、雨風をしのげる場所がどんどん少なくなっています。私は知識としては知っていましたが、Aさんはまさにこのような現実に直面していたのです。

 このような社会の不寛容さ、接見を通じてAさんが困ったときに頼ることのできる機関や制度を学んだことを法廷で明らかにし、更に最後のセーフティネットが機能するように出所後の生活保護申請に関する委任契約書を証拠提出しました。

 検察官の求刑は懲役5年、直近前科は3年6月。今回の判決も3年6月。出所後の更生環境の整備を裁判官は考慮したようです。

2021/09/22
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